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2018.12.29

毎月25日はCMの裏側から 「ある企業からの質問 、“かっこいい”とは何か?」

プリント

 
 

■「日本のマーケットにおいて“かっこいい”とはどういうことか?わかりやすく解説できないか?」
 

 20年くらい前になりますが、ある企業から課題をもらいました。

 「日本のマーケットにおいて “かっこいい”とはどういうことか? なんとか定義できないか? できるだけわかりやすく解説できないか?」という課題です。

 

 もともと、その企業の広告を長い間担当させてもらってたんです、企画と制作を。でそのブランド(商品)の価値が「挑戦心がある」とか「かっこいい」だったんです・・・。

 

 当時の日本経済は停滞し「無理はしない」「挑戦はひかえる」という空気、若者の間には「頑張るというのはダサイ」「さりげない、がかっこいい。努力とか汗とかダサ」という空気がただよう時代でした。「CHALLENGE」「挑む」というコピーは広告界から消え去っていました。当然、そういうことを訴求する商品も受け入れられないワケです。つまりこのブランドの人気は今ひとつ・・・。70年代は非常に人気のあるブランドで、学生達は平たくつぶしたかばんにそのブランドのステッカーを貼ることが流行ってたくらい。

 

 『じゃその商品の価値を変えればいいじゃん』と言われる方もいらっしゃると思いますが、そうはいきません。フェラーリがミニバンや便利なクルマ(例えば小さなエンジンで多くの荷物や人が乗れるクルマ)を作らないのと同じです。本来の存在価値や個性を捨てるわけにはいかないからです。
※日本ではこの考えがなかなか理解してもらえないんですが、欧州はこういう考えが一般です。たぶん地続きで国が接していて、各自の個性(つまり存在価値)をはっきりさせていないと、つぶされる(侵略される)という経験があるからなのかも。

 
 

■かっこいいとは何?
 
 そのときはこの質問というか課題には上手く答えられませんでした。それなりに努力はしたんですけど・・・汗。

 

 ちょうどその頃、五郎さん(モトショップ五郎の吉澤博幸氏※)と知り合います。五郎さんは、「かっこいい」という言葉をよく使ってました。五郎さんのイベントや考えを理解するには、五郎さんの「かっこいい」を理解する必要があります。この言葉の意味を理解しなければ、その五郎さんの企画やアイディアをちゃんと把握できません。把握できなければ、企業やスポンサーにも納得してもらえる提案ができません。また、そのためのアイディアも出せないし。
 当時たびたび深夜までファミレスなどで話をしてました(打ち合わせというか雑談というか、そんなこと)このハナシの中でアイディアを出し、いろいろが決まっていきます。そのハナシなかで五郎さんのココロの奥にある「かっこいい」が何なのかを理解しようとしていました。ときどき理解のヒントになりそうなことがあったらすぐに直接聞きます。
 でもそんなことを質問されても、当事者も実はわからないんですけどね・・・。そういうときは五郎さんも一緒にその自分のアタマのなについて掘り下げて考える。すると意外と解決案が見えたりするんですよね(笑。かっこいいの基盤が見えて来て、判断の規準がはっきりするから。
 こうやってオーバーオール、マルチプレックス、GAMES tokyoなどのイベントやMOTO1(当時の全日本スーパーモト選手権)のあれこれが決まっていきました。
※吉澤博幸:原宿バイクと呼ばれたTWをカスタムするあの流行やオーバーオール、マルチプレックスなどを企画し実行した方です。全日本スーパーモト選手権をMFJのもとに日本に作ったのもこの吉澤氏です。

 
 

Gツーリング吉澤

 

 ある日ふとわかったんです、「かっこいい」ということの一面が。「憧れを抱くことができる様」ということかなと。キーワードは「憧れ」?と。
 日本では、良いイメージのあるものに対して、「かっこいい」とか「かわいい」ということばを使います。悪いイメージのあるものには「ダサイ」を使います。多くの評価はたいていこの3つの箱に分類されるように感じました※。そのなかの「かわいい」という感情について考えていたら、「かっこいい」もなんとなく見えてきたような気がしたんです・・・。なんとなーくだし、あくまでも仮説ですけど。
※地域によっては「おもしろい」という箱と「おもしろくない」という箱も。

 

 「かわいい」は自分の近くにあって、なおかつ、やや下に位置するモノやコト。抱きしめたくなるという気持ち。かなと・・・。
対して「かっこいい」は自分より上にあり、背伸びしなければ手が届かない位置にあるようなモノやコト、に抱くように感じました・・・。違う言葉で言うなら「憧れ」です。
 「かっこいい」のなかにもいろいろなレベルがあって、上位の「かっこいい」はかなりがんばらないと手が届かない。思い切りジャンプしないと届かない。もっと上位の「かっこいい」は、ジャンプしたくらいでは手が届かず、ちょっと後ろにさがって助走が必要、もしくは自分が成長する必要があるとか。それを手にするには努力が必要なのがかっこいいなのかなぁと。

 

 あ、すいません、かなり勝手な決めつけだけど、こう考えるととても整理ができたんです。「かっこいい」と感じることができたら、その商品は多少高くでも手にしようとする可能性が出て来るわけです。モンスター(エナジードリンク)が高い価格でも売れるのはこういう理由もあるのかなと思います(というか、この心理状態を活用しています。他にも多くのブランドが活用しています。主にファッション界はかなりむかしから)。つまり、かっこいいと感じてもらえたら、多少高い価格でも、わざわざ東京お台場まで行かなきゃいけなくとも、マルチプレックスやGAMES tokyoやMOTO1に足を運んでくれるかもしれないと。

 

 このかっこいいの定義(定義じゃないすね・・汗)はその後の仕事で役に立ちました。実際この考えを、その最初に質問をいただいた企業の宣伝部の方に話したことがあります。「いまさらですがこんなことじゃないかと思いました」と。なにかのロケ撮影で1日くらい待ちがあって、そのときの雑談中に突然思い出し、お話したんです。
サーキットでの撮影なのに、その当日雪が降ってしまい、その雪がとけるのを待つという事件でした。結果的にはその雪をサーキット側が全周除雪したんです、すごかったです。もしかしたらこれを読んでる方にそのときの当事者の方がいるかも。。。あのときはありがとうございました!

 

 その担当者の方も「たしかにいまさらだけど(笑)、でもわかったような気がする。あのとき知りたかったこととは違うけど、わかりやすい」っておっしゃっていただいたんです。そう、あのときの質問は「かっこいいとはどういう表現なのか?ターゲットのもとめるかっこいいは何か?」ということを得意先の企業は知りたかったんですよね。

 
 

■かっこいいは、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけルールをやぶっている状態だったりして

 

 その後、五郎さんと話をしていてまたわかったことがありました、かっこいいについてです。
 かっこいいというのは、「ちょっとだけそれまでのルール、もしくは常識をやぶっている様」なのかな、といいうことです。ルールもすべてが正しいわけではなく、今では意味をもたない内容が含まれていることがたまにあります。あ、すいません。怒らないでください・・・(汗。

 

 そういう古くなったりして役にたたないルールや常識ってやぶりたいですよね。でもやぶるには勇気が必要・・・。なので、普通はなかなかできない。ですが、たまに勇気のある方がそれをやぶってくれます。そういうとき、その人をかっこいいと感じるように思います。
守らなきゃいけないルールはやぶってはいけないけど、多くの方々が、それってもしかしたら意味のないルールやきまりだったりして、と思ってるけどなしくずしに守っているルール・・・そういうルール(言い換えると常識かな)を、意味ないよね、って破壊する(というか僕的には「無意味になった柵をぴょんと超える」というかんじなんですが)。このとき、挑戦ということばを使うと、この破壊行為がいい意味になったりします。汗をかいて努力しながらなら許されるという日本人の気風を活用しちゃったりして。

 

 こういうことを話しながら、オーバーオールやマルチプレックスやGAMES tokyoはどう演出するのか?どういうイベントにシたらいいのか?なんかを決めていました。

 
 

プリント

 
 

■「かっこいい」にはもうひとつ偉大なパワーがあります。「かわいい」「面白い」も同じなんですけど。

 
 何かを良いと感じてもらうとき、理屈で納得させる方法があります。バイクや乗り物の場合は「性能」です。言い換えるならスペックという数字や便利性です・・・。説得にちかいやりかたです。
 もうひとつあるのが、感情(情緒)を使う手法です。スペックや便利性による説得という手法じゃなく、もっと速度のある方法です。それが「かっこいい」とか「かわいい」という感情を利用する手法です。これが上手く成功すると「良い」のひとつ上の「好き」という感情を創り出します。もっと上手く行くと「愛する」というところまで持って行くことができます。
 これは人を対象にするとわかりやすいと思います。
 ・性能の高いひと
 ・便利なひと
 ・好きなひと
 ・愛したひと
という具合です。実は人の判断基準のなかでは、便利や性能ってランクが低いことがあるンです。

 
 

中上写真 2017-07-08 13 49 32
photo:Nakagami Ryohei

 
 

 かなりひどいことを書いていますね・・・、すいません。
 でもこれが「かっこいい」とか「かわいい」という感情の可能性じゃないでしょうか。愛してしまったら、多少悪い性能でも不便でも許してしまいますよね。

 

 モンスターもレッドブルも性能や便利性では売っていません。他の一般的な炭酸飲料にくらべたら持ってはいますが、あまり訴求はしません。
 むしろかっこいいという感情をいだかせることで、その価値や魅力を生み出しています。だからステッカーを貼るわけですよね。というか多くの欧州のブランド(商品)はこの感情を上手く活用しているように思います。

 

 あ、このハナシは、性能やスペックや便利性の否定ではないです・・・「ひとは感情によって、良い悪いを決定している部分がある」という仮説です(実はこれは実証されています)。その際、「かっこいい」という感情はすごいパワーを持つかも、という仮説です。

 

 好きなアーティスト(音楽の)は、かっこいいですよね、理屈じゃなかったりします。(というか、音楽をきちんと理屈で理解できるひともいるわけですが、僕は少なくともそこまで詳しく無いので、「かっけー!」という感情が先に来ます。)

 

 ちなみに。この「かっこいい」にはいろんな種類のかっこいいがあり、これがなかなか難しいみたい・・・。ワイルドなかっこいい。スマートなかっこいい。セクシーなかっこいい。冷静なかっこいい。知的なかっこいい。かっこわるいかっこいい・・・などなどなど・・・。

 
 

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質問ご意などお気軽にこのアドレスへ→ kondo@kondo-design.jp
KRAZyは情報の無料発信にこだわっています。発行責任者:近藤正之
KONDO design / 近藤正之
広告企画と制作が主な仕事。時には商品企画なども。Panasonic、TOYOTA、Suntory、Sapporo Beer、Asahi、ANA、としまえん、ミツカン、Loft、Monster Energy、日本生命、JT日本たばこ、クリニーク、コカ・コーラなどを担当。工業デザインではヤマハ楽器+小室哲哉のオリジナルピアノのデザインも。

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