2024.10.20
CYCLING A GO GO Vol.28「苦手な坂を一生懸命駆け上がったら、建築の暗号に誘われたの♡」
■CYCLING A GO GO / サイクリング ア ゴーゴー Vol.28
「苦手な坂を一生懸命駆け上がったら、建築の暗号に誘われたの♡」-20.Oct.2024-
毎月20日は、相良さんことMr.チャガラさんのロード自転車の連載です。
Mr.チャガラさんは僕が会社員時代の同僚(Mr.チャガラさんはデザイン界の巨匠大貫さんと仕事をされていました)。今は独立し自転車ロードレース界でスポンサーシップ・エージェントの仕事をされており、最近自分でもロードレーサーを購入しロード自転車ライフを楽しんでいます。
そんなMr.チャガラさん、今回は「坂」に向かいました。ロード自転車といえば坂でしょ。ではでは
■苦手な坂を一生懸命駆け上がったら、建築の暗号に誘われたの♡
Mr.チャガラがサラリーマンを辞めて独立して最初に会社の拠点をつくったのが、東京の多摩ニュータウンの近く。そして今は愛知県の高蔵寺ニュータウンの近くにいます。ドン・キホーテという誰でも知っているお店の前身は西荻窪にあった「泥棒市場」というお店ですが子供の頃は家の近くにあって時々行っていて、その後ドン・キホーテの1号店ができたのがサラリーマン時代に住んでいたところの近くで、メガドンキは今よく利用するお店。なので、ニュータウンとドン・キホーテはいずれもMr.チャガラが気になってしまう存在。そういう意図していなかったのにまとわりつく関係性を好意的な言い方だとご縁があるといい、少し慎重な言い方だと因縁があるなんていったりします。1日3回も偶然に同じ異性にあって運命を感じて結婚したあなた、ストーカーされていましたよ。こういう根拠なく言いがかりつけることを「因縁をつける」と少し前までは言いましたね。因縁をつけすぎると威力業務妨害という罪に問われることもあるので、まずは心をきれいにして生活しましょう。
■坂を登れずあきらめたトラウマが蘇るのを跳ね除け進むのぢゃ
前回に引き続き愛知県春日井市東部の丘陵地帯にある高蔵寺ニュータウンが今回の舞台。この高蔵寺ニュータウンのてっぺんを目指して麓の高蔵寺駅を出発してぐるりとサイクリングをします。実は前に定光寺の坂を上ることができず挫折して引き返したことがトラウマ気味になり、出発地点に向かうまでグズグズしていました。高蔵寺ニュータウンに隣接しているのが航空自衛隊高蔵寺分屯基地。基地内には高座山(たかくらやま)という山があって普段は当然立ち入ることはできないけれど、令和6年は11月16日(土)に年に一度の秋の爽やかな高座山ハイキングがおこなわれるそう。なかなか立ち入ることができない聖域に侵入することができるなんて、とてもワクワク、スケジュール帳には一応行くつもりでメモメモ。で、この自衛隊の基地のことを高蔵寺の居酒屋でカウンター隣りの人に話をふると、「あそこは爆弾山だよ」という返事が返ってきます。どうも航空自衛隊が全国で2箇所持っている弾薬備蓄のための大規模な弾薬庫のうちのひとつがここのようです。ワオ!エネルギー満タン、ボクの爆弾、ひとつ間違えたら辛さ爆発坦々麺! 20t弾薬庫が26棟、貯蔵能力5200t(諸説あります)っていったいどんなもんだか皆目見当つきません。ニュータウンに向けて駅からこの自衛隊基地の方面経由で自転車は坂を攻めに行きます。
▲スタート地点の駅前はフラットだけれどすぐに緩やかな坂に差し掛かります、ここは丘陵地帯。お、自衛隊前という名のバス停。この先は上り坂。試練はあるかもしれないけれどその先にはきっといいことが待っている。
▲フェンスの向こうは、かつてはアメリカだったこともある自衛隊基地。ドローンを勝手に飛ばすと処罰されるゾ。あの山が高座山ですね。その下に爆弾がたくさん隠されているかもしれないと考えるだけで、山のパワーが何倍にも高まるイメージです。
▲どうだ、この急な坂!といわれても普通の撮り方では伝えることが難しいのが坂の厳しさ。自転車のギアは力いっぱい軽くして、少しでも緩やかになれば一段重くして、サイクリングはスポーツだと自分に言い聞かせてペダルを踏みこむ。
■まずはてっぺんを目指す、それは人生そのもの
ここは丘陵地帯なので、坂は上り坂ばかりでなく下ることもある。坂を上るとフラフラになり身体は安易に緩やかな下り坂が目の前にあるとそこに向いていきたくなります。でも目指すのはより高いところ、ここで少しでも下ると次の上りはよりきつくなる。今までの積み重ねもロスしてしまう。オイラの目標は高いところにあるからと心に鞭打ち、上りな道を選んでいく。おお、大谷翔平!ということで、クライマーサイクリストにとってはなんてことのない道を、自分の中のチキンを鼓舞して坂を上り続けます。Mr.チャガラ、ファイト一発!
▲ここは高蔵寺ニュータウンのほぼ最高地点近辺の高森山公園。野球グランドがありました。今はもう秋、誰もいない。
▲ふと目にはいった昭和の遺構。設計者はこのマルと夕日の効果を計算していたのか?
▲高蔵寺ニュータウンの頂上に残るモノリス群。数万年後には祈りを捧げた神聖な場所として発掘されるかもしれません。連続したマルが心の奥底に何かを語りかけて来ます。
■ニュータウンからリ・ニュータウンへ変貌中
必死にペダルを踏んでいると写真を撮るのを忘れ、目的に向かってひたすらに走るようになります。ひたすらというのは研ぎ澄まされた集中した状態ですが、同時にほかのことに意識がいかない余裕のない状態であるともいえます。Mr.チャガラは前者ですね、むふふ。で、ニュータウンはベッドタウンからゴーストタウンになってきたといわれて久しいですが、そんな状態を放置しようと考える行政はありません。変貌するニュータウンの明日と昨日の象徴的な景色を発見しました。
▲向かって左がニュータウンの新しい分譲住宅エリア、向かって右側がかつての団地群の取り壊し風景。パノラマ写真にすればよかったと今になって思いますが、新旧対比が印象的な場所です。
▲奥さん、慈しみの団地ですよ。高度成長期の日本人の憧れと生活を支え、子供たちも無事巣立ち、どこかに行ってしまった。取り壊されて新たに生まれ変わるリ・ニュータウンとはどのようなものか。人口減少が予測される中、まさかここにタワマンをつくろうという話はあるのか?
■てっぺんまでいった後は、ご褒美の下り坂三昧
人生で下り坂というと良い意味になりませんが、サイクリングの場合は特にビギナーにとっては大歓迎です。フロントブレーキをなるべく使わないようにして事故を防ぎます。前輪ロック下り坂1回転を防ぐためですね。高蔵寺ニュータウンは自衛隊基地と隣接しているので、自然に恵まれた場所だといえます。なぜなら基地の大半は高座山の自然で手つかずとなっていて、夏場はクールなブリーズを虫とともに送り届けてくれるからですね。パトロールの犬も放し飼いになっているようです。広大なドッグランぢゃな。
▲高蔵寺ニュータウンはその中心にサンマルシェというショッピングセンターがあります。すぐ横は高座山ですがそれはつまり自衛隊基地。弾薬庫なだけに「火気厳禁」の看板も。
▲ざっとこの日のルートを地図に落とし込むとこんな感じ。10kmほど走って154mの上り下りをしたのですね。このルートは意外とクルマも少なく道も広めなところも多く、坂に慣れながら走るビギナーにとっては問題なしのコースでした。
■高蔵寺ニュータウンに見る建築的なモチーフの歴史的連続性を発見する
高蔵寺ニュータウンを回っていくと、建築家の意匠的な意思を強く受け止めます。この記事の冒頭の高蔵寺駅の構造物、高森公園のモノリス群、そしてこれから出会う団地のデザインに盛り込まれた「マル」の連続性。高蔵寺ニュータウンはこの「マル」によって建築家の感性が表現されています。
▲まるでマルのために平面があるような構造物。マルは丸くおさまる、和む、調和するなど柔らかなメッセージの象徴でもあります。穴と表現する人もいます。
▲高蔵寺駅にあるマルのモチーフのある構造物。明り採りのガラスタイルは昭和の高度成長期に流行ったモチーフ。教会の神々しさすらも連想します、蛍光灯がなければ。丘陵地帯を巡って出発地点に戻るとこの広大なニュータウンに刷り込まれたマルと対話していたことに気がつきます。
▲サイクリング後に電車に乗っていたら千種駅を過ぎたところで突然視界に入ってきた新しめの「マル」。こちらの建物とのデザイン的なつながりを感じてしまうのは私だけでしょうか。ストリートビューにもあったので幻覚ではありません。
▲東京国立博物館では2024年10月16日(水) ~ 2024年12月8日(日)、特別展「はにわ」が開催されています。サイクリング後に埴輪を見て強烈に届いてきた「マル」のメッセージ。日本人は古墳時代(5世紀前後)から造形物に「マル」を取り込んでいたことが良くわかります。高蔵寺ニュータウンの「マル」も設計者のDNAにインプリントされていたことだったのではと、1500年の時空を超えて感じるのでした。
END
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