2024.12.20
CYCLING A GO GO Vol.30「日ごろの不健康が足元に強烈に来た日、人々の優しさが猛烈に沁みました」
■CYCLING A GO GO / サイクリング ア ゴーゴー Vol.30
「日ごろの不健康が足元に強烈に来た日、人々の優しさが猛烈に沁みました」
毎月20日は、相良さんことMr.チャガラさんのロード自転車の連載です。
Mr.チャガラさんは僕が会社員時代の同僚(Mr.チャガラさんはデザイン界の巨匠大貫さんと仕事をされていました)。今は独立し自転車ロードレース界でスポンサーシップ・エージェントの仕事をされており、最近自分でもロードレーサーを購入しロード自転車ライフを楽しんでいます。
そんなMr.チャガラさん、今回は非常事態発生〜!
■日ごろの不健康が足元に強烈に来た日、人々の優しさが猛烈に沁みました
ある朝、グレゴール・ザムザが気がかりな夢から目ざめたとき、自分がベッドの上で一匹の巨大な毒虫に変ってしまっているのに気づいた。
この衝撃的な書き出しで始まる小説は、チェコ出身の小説家フランツ カフカの「変身」ですね。学生の時読んだ人もいることだと思います。ここからは私の体験談です。
ある朝Mr.チャガラが目ざめたとき、自分の足首に鈍い痛みがあることに気づいた。その日は地方出張に行くこととなっていて軽い痛みを抱えながらも駅に向かい電車に乗った。軽い痛みだった足首はやがて大きな痛みに成長し、駅の乗り換えでは必死に痛みを我慢しながら移動をした。空港に着くころには歩行がほぼ困難な状態となりやむなく空港インフォメーションで車椅子の貸与と介助を申し出て、航空会社カウンターで車椅子を乗り継ぎいで介助者も変わり、搭乗する際にはスタッフに痛みが最小限となるように配慮をいただいた。
Mr.チャガラ、どうやら自転車に乗っている場合ではないですね。大きな2輪と小さな2輪の乗り物の搭乗日記に今月はなります。
■とりあえず2日間の移動の状況を簡単に
プロペラ機の国内線に乗り1時間半程度で東北地方のとある空港につきました。到着地でも車椅子がスタンバイし、レンタカーカウンターまで介助してもらいます。クルマを自分で運転して打合せ会場に向かうのですが痛みは右足首に出ているものの幸いアクセルは踏めて運転にはあまり支障が出ません。ただ、急ブレーキを踏んでしまうと、大激痛!!玉乱です。現地では階段を上り下りする際にはクライアント様に介助いただき、レンタカー返却所からホテルまでは丁寧にタクシードライバーのサポートを受けました。ホテルは残念なことに車椅子がなかったため、ひとり予約した部屋まで歩きます。部屋は長い廊下の突き当り。脂汗を垂らしながらゆっくりゆっくり足を引きずり進みます。そしてその夜は痛みにこらえきれず2時間おきに目をさましながら過ごし、朝食も食べに行くことを諦めました。歩く距離はできるだけ短くするためです。朝の移動はリムジンバスの停留所までコンコースの手すりをつかまりながら歩いたものの、普段と比べて歩行速度が格段に遅く目の前で予定していたバスは発車してしまう。嗚呼~、寒空の下で待つこと1時間、バスの高いステップを這い上がるような感覚でよじ登り、空港到着時は下車の時に乗客の方により手が差し伸べられ、カウンターでは車椅子の介助をお願いし、無事飛行機に乗り込むことができました。空港からは私鉄・JRとも駅にて車椅子の介助をいただき地元駅に到着。駅から家まではタクシーで移動予定を勧められたものの1台もなく、親切な駅員さんに特別に親切に建物の下まで送り届けていただきました。足は激痛がずっと続いていましたが、多くの人の親切で難局を乗り越えながらやがてクリニックに行き診断をもらい、ロキソニンが処方されます。この薬は今一番人気の鎮痛剤ですね。
■ある朝、足首に強い痛みがあって感じたこと
まず、読者のみなさまはこの歩けなくなるぐらいの足の痛みは何だろうと思うわけです。人生経験を重ねている人は、あ~、アレだな!とピンと来てしまいます。風が吹いても痛いと書いて「痛風」です。フランス語ではla goutte(ラ・グットゥ)といいフランスのルイ14世、皇帝ナポレオンも痛風持ちだったといわれています。美味しいものをよく食べる人がなりやすい病気なんて言われて、激痛に苦しんでいても人に同情されることがなかなか難しい病です。しかし、この痛みは言葉に表せないぐらいに痛い。痛さにこらえながら歩けば普通の時の10分の1以下の速度、カメと同じ。車椅子に乗って段差のギャップで振動が伝われば悲鳴、ベッドに横たわれば誰かがいつも鋭い歯で食いついている感覚。自分の体重がそのまま患部への凶器となる苦しみ。尿酸値を高めるプリン体に気をつけなさい、なんてネットには書かれているけれど贅沢なものを飲み食いしなくても発作は突然やってくる。問題は家ではなく出張先で発症すると、本来のスケジュールはこなさなければならない、医者に行けない、移動手段になれていない、介助してもらっているとトイレには行きにくいし、食事もとるのが容易でなくなる、気がつくと水分も取っていない。苦しみが消えてほしいと願うこと以外に脳味噌を使うこともできない。
色々と言ってみたもののとどのつまりは痛いと言っているだけ。しかし、世の中そう捨てたものではない、いや、優しい人にあふれていると移動した分だけ感じるわけです。公共交通機関であまりの苦しさに助けて!と車椅子の介助をお願いすれば親切に次の場所まで連れていただく。次の場所で新たな人に移動の介助が引き継がれ、また引き継がれ、気がつけば目的地までほぼ歩くことなく車椅子で移動している。途中、歩かなければならないところは見知らぬ人が手を差し伸べてくれる。「感謝」という言葉以外に浮かぶ言葉がない。いつか、自分も同じように人に返していくと心に誓うのです。
ただ、これは東京以外で起こった出来事。東京は人にあふれていて、電車に乗れば優先席には若い人が駆け込み、普通の席では松葉杖の人がいても席を譲らず、ホームでは駆け足で横を通り過ぎていく。あまりにも競争が多く、電車の移動距離も結構あるので自ら席をたち上がるだけの気力もなく、自分自身が疲れすぎている。時間に追われすぎている。東京は冷たい街、なんてかなり昔から言われているけれどあながち間違いではないと感じる。こんなに豊かなのにヒトに優しくできるほどの余裕が生まれにくい不思議さがあります。若さと強さ、弱肉強食、焼肉定食。生存のための本能がもたげます。東京は人々が優しく手を差し出せない分、制度やユニバーサルなデザインで補う必要が生まれ、エレベーター、エスカレーターが充実してきます。でも、細かいところにはまだ行き届いていないかも。そんな健常者ではない視点のレポートでした。
END
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