2017.09.15
FIM アジア スーパーモト 2017 Round1 タイ / レースレポート Part3
FIM アジア スーパーモト 2017 / レースレポート Part3
・・・・Race Report Part2のつづきです。
タイムアタック予選
土曜日のタイムアタックでトップタイムを出したのは英国の#8コーニッシュ選手。
それに続いたのはマレーシアの#1ガビット選手、2016年のアジアチャンピオンです
(選手については9月13日のPart2のレポートをご覧ください)
そして#17オランダのモトクロス世界戦にも出ていたというマーセル選手、ダートセクションでのマシンを前に前に運ぶライディングが見事です。跳ね上がるジャンプは無理に飛ばず、早く着地し次のヘアピンコーナーに向かいます。この区間はたぶん最も速かったのではないでしょうか。
ここまでがフロントロー。
2列目がタイの#5トラカン選手、2015年のアジアチャンピオンです。
そしてマレーシアの#32ハイリ選手(Khairi Zakaria)、今年からハスクバーナに。
とつづきます。
#101佐々木タカシ選手は8番手3列目。
今回初参戦の#300高山ナオト選手は7番手、同じく3列目
なかなか現実は厳しいです・・・。
▲英国代表の#8LewisCornish。マシンはハスクバーナ。チームはマレーシアのメカニックが母体。
9月3日 sunday 1200時 Race1 20分+1周
そしていよいよ決勝Race1(※)。
1コーナーにトップに入ったのは#8コーニッシュ。#300高山も好スタートを決め4番手で1コーナーに入るが#17マーセルにアウトに押し出されるような形となり、中盤手までさがる。#101佐々木もそのあとにつづく。
※レースは1日2回行われます。海外ではヒート1ヒート2ではなくレース1レース2と呼ばれます。こっちの名称ほうがレースに詳しく無い方にもわかりやすいような・・・。
▲#300 TakayamaNaoto 初めて乗るYZ450F。「最初は慣れたCRFと前後バランスの違いにとまどったけど、走ってるうちになれました。パワー感がいいですね!」この日のだれよりも豪快なスライドを見せていました。
トップの#8コーニッシュ選手のすぐ後を追ったのは地元タイのtmに乗る#5トラカン選手。そして#1ガビット選手とつづきます。#300高山は7番手まで上がるのですが、ホームストレートに戻るヘアピンでスリップダウン、そこで#101佐々木選手ら数人が前に。
レースはトップ英国#8コーニッシュ選手、そしてタイ地元の#5トラカン選手、マレーシア#1ガビット選手、オランダ#17マーセル選手とつづきます。高山選手は順位を上げ7番手までもどります・・・。
が#101佐々木は順位が上がらない、走りにキレがないように見えます。
日本で250ccクラスで戦ってきたときから佐々木選手の走りを見てきていますが、全体にシャープさがない、というか思い切りがない・・・、1週間前に痛めた首の調子がわるいのかもしれません。#101佐々木選手はこういうとき確認しても「大丈夫ですっ!」としか言わないから本当のところはわからないけど、終日首と背中に湿布を貼り続けていたから、少なくとも何かあるのは間違いない様子です。
結局#101佐々木は途中でリタイヤします。残ったRace2にかけるためという判断です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
すいません、ちょっと内容を変えていいですか・・・(汗。
実はこのレポートでレース展開を伝えること以上に伝えるべきことがあるのでは、と感じています・・・すいません、すいません。
今回、自分自身がレース展開を伝えることに興味がなくなりつつあります。
そのためか、どうまとめていいのかわからなく、写真をセレクトしながらもずっと考えつづけていました。アップが遅くなった理由はこれもあります。
こうして展開を書いていて、すごく違和感がありました。今、はっきり気がつきました。
で、やはり、伝えたいことを直接書くことにしました、レポートの途中ですが、内容を変えさせてください。facebookでも少し書いたことです。
▲#5Trakarn Thangtong / タイ・・2015年チャンピオンのトラカン、マシンはKTMからヤマハ、そして今はtmに。以前はアスファルトの上を効率良いラインでつなぐライディングができなかったのになぁ・・・。今はもう本当に速い!
もともとは日本のあのMOTO1をアジアに輸出しようと考えていました。MOTO1を創った吉澤氏とです。
理由は、日本のマーケットだけでは小さすぎて、プロはつくれないと考えたからです。プロをつくるとは、少額でもちゃんとお金が稼げるようにするということです。ライダーもチームもお店も、で、ゆくゆくはメーカーもちゃんとお金が稼げるようにするということです。この考えが正しいかどうかはわからいません。が、吉澤氏のTWの大ヒットや、お台場イベントのマルチプレックスからの判断もありました(※)
モタードという文化が大きくなっていくにはレースという華のあるスポーツが必要だし、そこにはプロはどうしても必要と考えていました。
※通称ゴローさんと呼ばれていたのがこの吉澤博幸氏。一昨年、急病で若くしてなくなりました。原宿バイクと言われたあのカスタムTWやスカチューンの大ヒットはこの吉澤氏がつくったものです。お台場でのマルチプレックスもこの吉澤氏によるものです。それまでとは全く違う考えで行動し、90年代以降のバイク文化に多大な影響を与えた人です。
▲#300 TakayamaNaoto
なぜそんなことをKRAZyが考えているのか? 主催者でもないのにおせっかいもはなはだしいですよね・・・
当時MOTO1が生まれたばかりの頃、モタード文化を拡大するにあたり、モタードスポーツ(※)のPRを自分が担当していました。MOTO1 Free Paperというのが以前あったのですが、それを作っていました。
で、ストリートモタードを主に拡大する役割がモトライダーForceでした。そう、設楽編集長ですね。
そんなことから、プロが必要とか、そのためにはアジアへの輸出はどうかなどを考えていたんです。
自分は広告業界で仕事をしていた経験から、企業の本音や望みも知っていましたし、また、モノをヒットさせた経験もありました(※)
※モタードスポーツ:モタード文化をレースなどのモタードスポーツと、ストリートでのストロートモタードとわけて考えていました。
※ヒットさせた経験:パナソニックブランドが始まったとき、そのフラッグシップとなったテレビ「画王」を人気商品に。累積100万台売りました。他にも、納豆「金のつぶ」や「追いがつおつゆ」など
▲#101 TakashiSasaki やや元気がない、というかツメきれてない走りだった。全体に緩慢・・・やはりいためた首のため?
話をもとに戻します。
1.プロは必要
・・・・華のあるその姿はモタード文化の象徴になるし、
またレースを続けていくには自腹はきついからです
2.だから大きなマーケットが必要
・・・・日本だけでは1万人のモタード人口も難しいかも。
しかし日本に憧れを持っているタイや韓国や台湾インドなどを含めたら
100万人も無理じゃない。
モタード人口と言っても、モタードバイクに乗らなくともよく、
MOTO1を見にいくとかグッズを買うでもいいんです。
↓ ↓ ↓
3.ならばアジアに輸出しよう。
・・・・輸出というのが重要で、利益は日本、つまり当時のライダーや
チームやショップやコンストラクターに
帰って来るわけです。
アジアでスーパーモタードレースを開催するのじゃなく、日本のMOTO1をタイや台湾で開催する
という考えです。
そのMOTO1で活躍する選手やチームやコンストラクターやマシンをつくるショップをアジアでスターにすることで、みなさんが利益を得るようにと考えたのです。
日本はいままでバイクというハードは輸出してきたのですが、文化については輸出したことはなく主に輸入だけでした。日本のMOTO1をアジアで魅力あるものにすることで、それが商品となって、利益が日本に入るというわけです。海外の主なスポーツはこれで利益をあげています。その利益が選手にも還元されるわけです。
▲#1 Gabit / マレーシア ・・・2016年のチャンピオン。KTMマレーシアとelfのスポンサーがついた。
そこから始まったのが、日本の選手にアジア各地のレースに参戦してもらうことです。2011年くらいでしょうか。
マレーシアでは金児リュータ選手、タイでは佐々木タカシ選手に金児リュータ選手に松本ヤスシ選手、台湾では高山ナオト選手に金児リュータ選手などなど。
その後、本来の目的の「輸出」という考えが消え、アジアでスーパーモタード選手権を開催する、に変わったため自分は抜けました。なのでその後のことは吉澤氏から報告を聞いていただけでした。
▲#17オランダのマーセル選手。さすがモトクロス世界選手権にでていただけあって、ダートセクションは速いです。つねにタイヤが路面を掴んでいます。
今もアジア選手権に参戦している佐々木選手はあの当時から協力してもらっていました。
当時、MOTO1で最も速い選手ではありませんでした。がそれ以上に重要な能力があったからです。それを佐々木選手はもっていました。
どんな状況でも走れること(アジアでは何もかもが上手くそろいません。どんな状況でもなんとか走らせることができる、精神的タフさが必要と考えていました)。
また社交的なこと。プロはこれが重要です。まだプロの仕組みができていない初期の時期はとくに。
Jリーグもカズ選手がいたことが成功の要因のひとつだったと言われています。
将来選手のリーダーとして若いライダーをひっぱっていけること。
当時は、若さも#101佐々木選手を選んだ理由のひとつでした。
こころよく引き受けてくれたときは正直ホッとしました。
当時は金児リュータ選手もいましたが、それは速さもありますが、
社交的なこと、タフで器用なこと(対応力が高くいろんなマシンに乗れる)、女性人気を獲得しやすいことなどから選びました。
人気は重要です。プロを目指すわけですから(※)
※プロ:そのマーケットの質が高くなると、見た目に左右されずその技量などでファンが増えるようになります。が、それまでは見た目も重要です。バドミントンのオグシオペアなどが良い例ですよね。大相撲などはマーケットの質が高いので、その技量でファンが生まれます(でもやっぱ若貴とかのほうがファンが増えるんですよねー)
プロはその仕事の質の向上に専念することのみが重要で人に対してニコニコすることじゃない、という考えもあると思います。がそれはその仕組みが出来上がった状態ではそれが正解なのかもしれません。が、まだできあがっていないときはまずお客様であるファンのみなさんと交流する能力は重要だと考えています。
▲#32はマレーシアのハイリ選手。マレーシアの選手は全体に速いです。今年の8耐3位に入ったカワサキチームのAzlan Shah Bin Kamaruzaman選手もマレーシアの選手。以前はモタードをやっていて金児リュータ選手と一緒に走ったことも。
「トップクラスなのにお金ももらえない(プロじゃない)、なぜそんなに一生懸命やるの?」と質問され、その答えに明快に答えられず困ったトップアスリートがいたそうです・・・。
たしかにそうですよね・・・レースを知らないひとからしたら、トップクラスはみんなプロなんだろうなと思われますよね。
お金もかかりそうなのに、そのかかる費用の多くは自分持ちなんて理解不能ですよね。
▲#28Natthapat Suksanwatthana / THAILAND
プロ選手を生む、各チームが有名になり多少は稼げる、マシンを造るお店もそこまでかけたお金を回収できてむしろその技術を利益に変える、このためにアジアに向かったあの2011年。
今それは、FIM アジア スーパーモト チャンピオンシップとなり3年目を迎えました。
このFASMも別な方法で選手のプロ化を目指しています。資金の豊富さがそれを可能にしているようです。
佐々木選手は今もそのなかで日本代表として活躍しています。アジア各国の選手やチーム、それだけでなく、運営役員やオーガナイザーからも愛されています。FIMアジアスーパーモトにいなくてはならない選手となっていました。
それは個人的にもとてもうれしく思いました。
▲Race2 のスタート
■Race Moto1
#300高山直人 7位
#101佐々木貴志 DNF(リタイヤ)
■Race Moto2
#300高山直人 5位
#101佐々木貴志 9位
こう書くと、「なんだよ・・・」と思う方もいると思います。
がアジアはレベルが高いです。身体能力がそもそも高いように感じます。国によってはモトクロスも盛んで、その能力はかなりです。
このなかで#300高山選手の5位はすばらしい結果だったと思います。
▲CRFは#101佐々木選手の、YZ450Fは高山選手のマシン。足回りはTechnix、タイヤはミシュラン。Technixさんはセットアップ走行の金曜から入りマシンのセットを行なっていました。
今後の Supermoto Japan のためにも このアジア選手権を。
今回の取材の目的は、このFIMアジアスーパーモト選手権が、日本のSMJを戦う際の目標になったらいいなぁ、という考えからでした。
2−3年がんばったらやめます、という空気が今SupermotoJapanにはありますよね・・・。全日本クラスで努力しトップクラスに登ってもプロがあるわけでもない、そこには何もないと気がついたら誰が努力するでしょう。「2-3年で、」と考えるのが当然です。
夢や目標があるから、人は努力し、その何かを突きつめていくような気がします。簡単には達成できない何かがひとには必要のようです。脳科学でもこれは証明されています
というか、実際に何かを普及し一般化する際には、夢とか目標が必要だと経験上感じています。これは言い換えると「憧れ」です。もっと身近な言葉で言い換えると「かっこいい」と感じさせるモノやコトです。
この夢や目標、つまり「憧れ」にこのFIMアジアスーパーモト選手権がなればいいなと感じてます。
世界はすぐそこにあります。そこには日本以上にタフで過酷な戦いはありますが、もっと大きな魅力もあります。少なくとも他の国のチームもライダーもその実力を見せたら認めてくれます。ファミリーに入ることができます。
そしてもしかしたら、そこにはプロがあります。
オーガナイザーはプロが生まれるよう積極的に取り組んでいます。ひとりでも多くのひとにこの選手権を知ってもらい好きになってもらう努力、例えばネット情報の充実や放送にお金も人材もかけています。
会場も華々しくすることで、誰でも気さくに来場でき楽しめる工夫も行なわれています。AMAなどでは当たり前に行なわれていることですね。
タイやマレーシアやシンガポールなどのアジア諸国はこういうことに前向きなんですよね、いい意味で精神論は言わずビジネス的です。スポーツのプロとは、スポーツがビジネスと融合するということでもありますよね。そういう意味ではビジネス的なのは良いと思います。
でもその一方で、プロが当たり前になるとスポーツの最低条件である公平性は薄くなります。そういう意味では自分自身はアマチュアのほうがいいのかなぁとも感じてもいます。あくまでも個人的にはですよ・・・(汗。
が、アマチュアでは、そのかかりすぎる費用からそのスポーツをやれる人が限定され、その文化が成長しません・・・ここが難しいところです(汗汗。
とかなんとか言ってますが、結局KRAZyも吉澤も何も成果を出せなかったわけで、なにかが間違っていたのかもしれません。それかもっと時間も労力もお金も必要だったのかも。米国のスーパークロスもスタンドが満席になるまでには、かなりの年月がかかっていますし。
でも、このFIMアジアスーパーモト選手権にはプロの可能性があります。またチャンピオンの座も見えます。ぜひ誰かに挑戦してほしいです。
今回のこの取材費は某所からのサポートでまかなわせていただきました。ありがとうございました!費用はすべて持ってもらったにもかかわらず、レポートの内容は自由、というKRAZyをジャーナリストのように信じていただけたことにも感謝します!
できれば今年もう一度このFIMアジアスーパーモト選手権を取材に行きたいと考えています。それはこの後のSMJにも役に立つと考えているからです。
今日のコーヒーブレイク
▲2016年チャンピオンのマレーシア代表のガビット選手が指差しているのは#101佐々木選手と#300高山選手のステッカー。このバッグの持ち主は#1ガビットのクルー、チームスポンサーはKTMマレーシアとelf。なのにそれ以上に目立ってる(笑。トラック内では厳しくハードな戦いがありますが、一歩トラックを出るとそこにはスーパーモトを戦うファミリーがありました。実力を見せれば認めてくれる世界です。
質問ご意などお気軽にこのアドレスへ→ kondo@kondo-design.jp
KRAZyは情報の無料発信にこだわっています。
それは「これから」のファン、つまりお金を出してまでこの情報を得ることはない方々に向かった内容だからです。
活動資金は広告出稿料もありますが、グッズの売り上げにもたよっています。
もしよければ、グッズを年に1回購入いただけますでしょうか。グッズの販売は年に8〜10回、販売形態は通販です。次回は9月の半ばかなぁ。新作Teeが間に合う予定です。
詳しくはKRAZy GOODSページをご覧ください。
発行責任者:近藤正之
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