2017.09.07
毎月5日は '今月の一行' /「ええい、連邦のモビルスーツは化け物か!」

■今月の一行「ええい、連邦のモビルスーツは化け物か!」
わたくしは昭和45年生まれでして、完全にガンダム世代なものですから、いろんなことをガンダムから学んでおります。
一番大きかったのは、戦争というのは善と悪が戦うのではなく、異なる二種類の善が戦うのだ、ということです。これは本当にカルチャーショックでした。
仮面ライダーであれば、ショッカーは無条件で悪であり、どんなにこっぴどくやっつけてもいい。むしろそれが痛快で見ていたわけです。ウルトラマンは、そこから一歩進んで「人工衛星に乗っていた地球人が宇宙で遭難し、救助を待つうちに環境に適応して怪獣化してしまった」という設定のジャミラなどが登場し、これはこれでショックでした。しかしガンダムは、相手にも家庭がある、みたいなところまで踏み込んでいます(そもそも敵に、味方の親族がいます)。また主人公も完璧超人ではなく、「勧善懲悪」から逸脱していたわけです。
これは「相手の気持ちを思いやろう」などという標語を聞かせれるより遥かに、相手の立場を想像するきっかけになりました。こういった経験のせいなのか、そもそもダイレクトに伝えたいことを伝えることで人の心って動くのかな、という猜疑心のようなものを抱えたまま現在に至ります。
また、ガンダムが巧いなあと思うのは、基本的に「敵に褒めさせる」んですね。とても力の及ばない圧倒的なライバルを用意しておいて、そのライバルに
「ええい、連邦のモビルスーツは化け物か!」
「一撃・・・一撃で撃破か!」
「やるようになった!」
と言わせることで主人公の成長を描くわけです。敵対=罵詈雑言ではなくて、敵が敵をリスペクトしている、その姿を通して主人公の成長を描いてくれる。安っぽかったり、説明的だったりするセリフが少ないという点が、ガンダムを大人の鑑賞にも堪えうるものにしているとさえ思います。
事程左様に、コミュニケーションの世界には「あーあ、言っちゃった」というものが存在します。
「自分で自分を褒めちゃった」
「自然発生的に生まれるから意味があるものを自分で要求しちゃった」
「中身が無いのに称号や報酬だけ手に入れようとしちゃった、あるいは手に入れちゃった」
「親しまれてもいないうちに相手に愛称で呼ぶことを押しつけちゃった」
みたいなやつです。
コミュニケーションの強度というのは、往々にして凹と凸になっていると強いのですが、真面目な人ほどすべてを語りたがってしまい、すべてを
語ると相手は相槌すら打つ余地が無いということを忘れがちです。これでは木材の面と面をボンドでくっつけているようなもので、椅子や机で
そんなことをすれば、ちょっと重いものを乗せただけで壊れてしまう。会話のキャッチボールになればなるほどコミュニケーションは強い、ということから、僕の周りでは時々これを「会話のデッドボール」と呼んでいます。
「言いたいことを、言うのでなく、言ってもらう」というのが一番効果的で、アニメやドラマの中だとそれがスムーズなので、見ていて羨ましいのですが、広告と現実社会との間では、なかなかこれがうまくいかないんですよね。
もちろん脚本には脚本で別の大変なことがあり、自分に書けそうもないこともわかっているのですが、、まあ何歳になっても隣の芝生というのは青いものですね。
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林 裕 Yutaka Hayashi
神奈川県鎌倉市出身。1995年慶應義塾大学環境情報学部卒、同年株式会社博報堂入社。2011年独立し、株式会社クラブソーダ設立。主な仕事に、田辺製薬「一本いっとく?」、CCJC「大豆ノススメ」、NTT東日本「エヌ山くんとティティ川くん」、SIREN:NT「羽生蛇村を求めて」、AKB48「前田敦子とは何だったのか?」、サッポロビール箱根駅伝「抜いてみろ。抜けるものなら」、海街Diary「家族を捨てた父が、のこしてくれた家族」等

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発行責任者:近藤正之
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